“建築・照明設計”とは、“建築と照明を一体的に行う設計”を意味する筆者の造語である。
そんなことは当たり前のようだが、日本では建築(意匠)設計と照明設計は分離されていることが多い。
意匠設計が終わって、電気設備設計が始まってから照明設計が行われるといった状況は論外であるが、意匠設計者と照明設計者がコラボレーションを行うというスタイルであっても、現状では一体的な設計とは言いづらい。
それは照明設計者が、建築(意匠)設計のことをよく知らない場合が多いことが一因と思う。
一般的に、意匠設計者は設計内容を照明設計者に伝え、それをもとに照明設計者は照明設計を行うが、建築(意匠)設計のことをよく知らないと、建築設計コンセプトを深く理解することができず、建築形状に目が向いてしまうことになる。
そうするとその建築形状を美しく見せるための照明手法や光色の選択などが照明設計の主体になってしまう。
照明設計(照明デザイン)は美観性が最も重要であるため、建築形状が美しく見えれば基本的にOKなので大きな問題にはならないが、本当の照明設計とは建築設計コンセプトから導き出されるもので、美観性に貢献する要素はその一部に過ぎない。
建築が望む照明を引き出すことが本来の照明設計と考えている。
“建築・照明設計”とはそういった考え方から生まれた概念で、一人の設計者が建築設計者と照明設計者の二つの視点を持ち、それぞれの設計内容をフィードバックさせながら、建築設計と照明設計の完全な調和を追究し、設計の質を高めていく設計プロセスを理想としている。
しかし建物の規模が大きくなり、技術も多様化した現在では、建築設計と照明設計の両分野において最先端の技術を維持することはほとんど不可能であり、逆に中途半端になる可能性もある。
そうするとやはり意匠設計者と照明設計者がコラボレーションを行うというスタイルが主流になると考えられるが、その場合でも各設計者が“建築・照明設計”の考え方を理解して、できるだけ一体的な設計を行うように心掛けるべきだと思う。
特に照明設計者が建築(意匠)設計を学び、できれば一度でも実践することが重要になる。
筆者も以前、住宅の建築設計を行った際に、最終案の空間の意味は建主との打合せや十数案という基本設計の変更を経ることで、はじめて完璧に捉えられたという印象がある。
また途中の案ごとに照明の設計も考えるため、照明から建築形状が決まるという逆転の発想も経験した。
そういったプロセスから導き出される照明設計の内容は、現在のようなコラボレーションのスタイルではなかなか出て来ないと思う。
つまり言い換えれば、"建築の思考プロセスで照明を設計すること" が、 "建築・照明設計"である。
提言